君が教えてくれたこと
唯ちゃんの両親が由梨の病室に来たのは、それから一週間ほど経った頃だった。
「唯は、産まれつき心臓が弱くて、学校にもほとんど行けませんでした。あの子、友達というのがどんなものなのか知らないんです。ですから、毎日皆さんのことを話していました」

・・今日はね、お姉ちゃんとお兄ちゃんと三人で、絵を描いたんだよ。
・・今日ね、真由美お姉ちゃんが、幸太朗お兄ちゃんと喧嘩したの。早く仲直りしてくれるといいなぁ。
・・今日ね、律子お姉ちゃんと遊んでたら、晃一お兄ちゃんが意地悪するの。
でも、本当は優しいんだよ。
だから、み~んな大好き!!

「本当に、皆さんに良くして頂いて、あの子は・・、あの子は」
この一週間、僕達が泣くことは、一度も無かった。

唯ちゃんの様に、笑顔で、笑顔で居よう。

それが、唯ちゃんに出来る、僕等なりの供養だった。
「唯のことをどうか、忘れないでやって下さい。皆さんが、唯のお友達になってくれたことを、感謝します。本当にありがとう」
唯ちゃんのお父さんは、目に涙を溜めながら言った。

男らしくて、父親らしくて、カッコ良くなった。
唯ちゃんのお父さんは、病室に一枚の絵を置いていった。

そこに描かれていたのは、唯ちゃんがクレヨンで描いた由梨や僕達の似顔絵だった。
僕は、その絵を見た途端、
一週間分の涙が、溢れて止まらなかった。

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