君が教えてくれたこと
僕は、学校祭で全校生徒の前で歌を歌う事になってしまった。
「本当に出るの?」

由梨が心配そうに聞いて来た。
「断れないでしょ?あの状況で」

「うん。・・、頑張ってね」

「おう」
とは、言ったものの、何も考えていないまま、学校祭まで、残り一週間を切っていた。
・・どんぐりころころどんぐりこ
しばらく歩くと、由梨が歌を歌い始めた。
「懐かしいな。その歌」

「これね、唯ちゃんがいつも歌ってたの」

「唯ちゃんが?」

「お母さんの子守唄なんだって」

「そうなんだ」
「今日はここでいいよ」

「そっか」

「いつもありがと」

「夜道は危険ですから」

「そうだね、優みたいの沢山居るもんね」

「そうそう。って、おい!気を付けてな」

「はい」

「じゃあ、また明日」

由梨の姿が見えなくなると、僕は歩き始めた。
ただ、ずっとあの歌が、頭から離れなかった。

家に帰るまで、あの歌を口ずさんでいた。

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