禁断の恋はじめます
「あの女のところに行くの?
行きたいの?」



「子供もずいぶん大きくなった…。
美里にも父親が必要なんだ。」


「勝手なこと言わないでよ。
じゃあ勇樹は?勇樹には必要ないの?
父親らしいことしなかったくせに
あの女の子供には父親面するんだ?」


二人は勇樹の両親だった。



「勇樹はもう大人だし……。
あいつは一人で生きていく力も
…あきらめももっている……。
勇樹には悪いことをしたと思ってる。
だけど…愛せなかったんだ……。
俺の人生を変えてしまった勇樹の存在を…
俺はどうしても愛することができなかった…。」



二人はずい分と深刻な話をしてるようで
私は心臓がドキドキしてきた。



「あなたの子供でしょ?
今さら愛せないなんて言わないでよ。」
母親の声が震えている。


「俺は……いつも問いかけていた。
俺は彼女を本当に裏切ったのかって……
だけどあの時は彼女を捨てて
君と一緒になることを選んだんだ。
でも…心の底でさ……いつも思ってた……。
勇樹は俺の子なのかって……。
彼女と再会して…彼女とまた愛し合って……
俺は確信したんだ。
もう二度と過ちは犯さないって……。
だから別れてほしい……。
何もいらないから体だけ自由にしてくれ…。」


「勝手なことを……。」


「君だって…勇樹を愛せたのか?」


残酷な問いかけだった。
私は走り寄って勇樹の耳をおさえた。

そして目を丸くしてる勇樹の
唇を奪った。


  可哀そうすぎる……


勇樹の目からこぼれおちるしょっぱい涙も…
私の唇で吸い取ってあげる……。
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