禁断の恋はじめます
薄い背中に抱きついた。


「やだ……もう啓吾と離れたくない。
私の人生から啓吾を
失いたくない……絶対にイヤ……。」



「わがままだな朱奈。
俺の幸せを考えてくれ。
このままおまえと別れるのが
一番いいんだって。」


「違うよ。神様が会わせてくれたのには
何か意味があるんだよ。
啓吾を…返してくれたんだ……
だからもう絶対に離さない……。」

私は号泣した。
薄い背中を折れそうなくらい
力いっぱい抱いて

「もう絶対に離さないから。」


そう言って子供のように泣いた。

しばらく時が止まっていた。
幸せだったあの家族の思い出が
走馬灯のようによぎっていく。
啓吾という太陽に照らされていた
私たち家族
笑顔の食卓
自慢の兄
そしていつしかそんな兄を
愛してしまった自分


そして…愛する人の手を
離してしまった後悔の日々

近くにいて一番遠い人
それが啓吾だった……。

「啓吾……もう離れるのイヤなの。」

そう言い終えた瞬間だった。

「う……。」

啓吾が苦しみだした。
尋常じゃない苦しみ方に私は
抱きしめるしかできなかった。
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