禁断の恋はじめます
「本当の愛って……?
簡単に手に入るものか?」


啓吾の顔が私を見据えた。
思わずドキンとして 手を離した。



「俺は朱奈が幸せならいいと思うよ。
人それぞれ愛への考え方は違う。」


私と啓吾は愛し合ってた。
兄と妹
そんな禁断の中の恋だった。

「朱奈には幸せになってもらいたい。
俺の大切な夢の中に住む
可愛い妹だから……。」


私の心の中で何かが目を
覚ましてはじめていた。


「もう哀れな俺に
会いに来ないでくれ。
一番見られたくないおまえに
全部知られて…
けっこう辛いんだ俺……。」


痩せこけた頬
今にも折れそうな腕


「朱奈の中での俺は
あの頃の俺で 思い出の中で
生かせてほしい。
それが俺の一番の願いなんだ。」


啓吾が去って行く背中を見ていた。
涙が溢れ出て啓吾をかすませて行く。


  朱奈…あんたそれでいいの?

私の心がそう叫んでいる。
このまま啓吾と離れたら
もう二度と会えない気がして…
私は走り出していた。
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