禁断の恋はじめます
しばらくしてまた啓吾の部屋に
行くと 安らかな寝息に
変わっていた。


布団を少しまくって
寝顔を見る。


痩せこけてしまったけど
ここにいるのは愛しい人……。


  何を泣いていたの?


啓吾の半分でもいい
その心の悲しみを引きうけてあげたい。


枕元に封筒が置いてあった。


綿債はその封筒を手にもった



『愛する我が息子』


啓吾の母親が啓吾にあてた遺書だった。
あれほどかたくなに
拒否して読まなかったのに



それで泣いていたんだ
おかあさんの想いの
たっぷりつまったこの手紙


私は静かにそれを戻した。


この安らかな寝顔が
痛みに苦しむ表情に変わる日が来る。

患者さんたちの
壮絶な戦いを目にしてる私は
啓吾にもその日が
いつやってくるのか


その覚悟は私たち家族にも
必要だと思ってる。
啓吾を支えるために
私たちはいるから



私は啓吾のこけた頬を撫ぜた。
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