光と闇
瞳には、強い光が鈍く光っていた。だが、反面悲しみを帯びていて、いつもの優しい瞳はどこにもなかった。
「父様と母様はどこにいる?重要な話があるんだ」
言葉に力が込めた。否、自然に力が入った。色々な心情が入り混じって複雑だった。
門番は少し後退して顔を歪めたが、やがて間を置いて口を開いた。
「いえ、あなたはこれから自分の部屋に向かうのです。お二人の命令です」
お二人とは、両親の事だろう。大方、外に出ることを許さないと言ったところか。
魅楼は怒りを覚えて、前に立ちふさがる門番を乱暴に突き飛ばした。
「うるさい、父様と母様はどこだと聞いているんだ」
魅楼は拳を強く握り、尻餅をついている門番を上から見下ろした。
門番は明らかに違う雰囲気を持った魅楼に息を呑んだ。
すると、ザッと足音がしたと共に城の方に人影が見えた。両親だ。
「魅楼、どこ行っていたの!早く城に入りなさい」
母の金切り声が聞こえた。
耳を劈くような声に、魅楼は顔を歪めた。
そして父を見ると、父は冷たく、感情を持ち得ないような顔で魅楼を見ていた。
「父様、母様」
魅楼は意を決して話を切り出した。二人は反応して魅楼の顔に目を向けた。
「俺は・・・後継者としてあなた方に命じる」
いきなり何を言うのかと、面を喰らったような顔をした。
それもそうだ。人形のように、自分の思い通りに息子を動かしてきた。その息子が自分に命令しようと言うのだから。
「お前、何を言ってるのかわかっているのか?」
父は声のトーンを落として言った。父の顔つきが変わった。
冷たかった顔つきが、蔑むような、見下すような顔つきに。息子に向けるような目つきではなかったのだ。
だが、魅楼がひるむ事はなかった。
国民の為に、奴隷という言葉を綺麗に消してみせる。その想いだけが、魅楼を動かした。
「あなた方に命令権はない筈だ。今の後継者は俺なんだから」
核心を突いた。親を裏切るという恐怖と罪悪感があったが、負けられなかった。
魅楼を見る両親の目が鋭くなるのを感じた。
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