トリップ
屋上の1階下。何も無く、人も来なさそうなところだ。
「・・・血生臭い」
少し歩くと、秋乃は着ていたコートをエリカに被せる。
「見ないほうがいいよ」
「わ・・・分かりました」
秋乃に誘導されるまま歩いていくと、途中でジュマが息を詰まらせる声が聞こえた。
「あ゛っ・・・」
「嘘でしょ・・・」
秋乃はエリカに「そこを動かないで」と言ってからその倒れた人物に駆け寄る。
「リクっ!しっかりしなさいよ!」
「そんな・・・」
ジュマの泣きそうな声、秋乃の必死な声が聞こえた。待つことなど出来ず、エリカは被せられたコートを取って、嫌なものを見る覚悟で駆け寄った。
リクは横向きに倒れていた。
特に右腕の傷が目立ち、深く捻じ込まれ、えぐれたような醜い傷があった。
秋乃がリクの額に手を当てて「やっぱり」と呟く。
「熱がある。こんな状態で戦ったら、さすがに手こずるわね」
「生きてるんですか?」
「生きてると思うけど、どこまでのレベルで意識が無いのか・・・」
そんな会話の中、エリカは1人で横に座り込んだ。デパートで会った日のことを思い出す。その帰り道の芝生、リクがしたことを真似た。
左手の全ての指を互いの指の間に入れて、強く握る。
「それ・・・」
秋乃がそれを見れ懐かしそうに言った。
「土岐の癖・・・。何でアンタが知ってんの・・・?」