トリップ
秋乃の呟きは、エリカには聞こえていないように思えた。
「聞いてる?」
「はっ、はいっ!」
「なんで、それ知ってるの?」
「え?」
首をかしげて、自分の手を見る。
「これ・・・デパートで会った時に見た、先輩の手の握り方なんですけど・・・」
「こいつが?」
「ああ・・・はい」
少しすると、手に握り返すような感触があった。そうも深い所まで意識が無い事は無かったのだ。
「あ、握り返しとる」
「本当!?」
「はいっ」
ホッと息をついたような仕草を見せると、秋乃は険しい表情に戻り、リクの腕を引っ張った。
「こいつ、病院に運ぶから。手伝って、ジュマ」
「は、はい!」
驚いているのか喜んでいるのか分からない顔をしていたが、沈んでいないことは確かであった。不意に、リクのポケットからはみ出かけた、お守りが目に入る。
友達が自分にくれて、次に傷ついた人がいたら、その人に受け継ぐようにと約束されたお守りだ。
『これとうちが一緒にエリカちゃんを守るで。もし傷ついた人がおったら、その人に受け継いだって』