トリップ
「せっ・・・先輩!いくらなんでも・・・」
真っ青な顔をしていたほうの警官が、あまりにも酷い行為に口を出す。
「仕方ないだろ。騒がれても面倒だ。恐怖は植えつけた。何も喋らないだろ」
叫びたい。
誰かにすがって泣きたかった。
だが、助ける者は誰もいない。
警官はもう一度リクに銃口を向けた。
「早く帰れ。それとももっと痛い目に遭いたいか?」
まだこれほどの痛みを知らなかった時代。恐怖に怯えるという感情が一気にこみ上げてきて、そのまま言いなりになって逃げてきてしまった。
公民館に帰ると、そのまま涙と血にまみれて倒れこむ。最初に見つけた少女が、甲高い悲鳴を上げた。
「いっ・・・嫌ぁぁぁっ!!」
その声に反応し、全員が駆けつけてくる。その後からも、泣いたり、悲鳴を上げる者が何人もいた。
「どうしたのよ!何があったの?」
「ひでぇ・・・撃たれたんだ。貫通してる」
「くそっ!」
男の中では、悪態をつくものさえいた。そんななか、リクはすすり泣くようにして喋った。もはや血を止める余裕も、彼には無い。
「よくよく・・・・・分かったよ」
「リク、アンタ何言って・・・」
「いい人に限って、酷い死に方することも、あるんだね・・・・」
「え?何を・・・」
リクは溜まっていた悲しさと怒りを、遅くぶちまけるように、拳を床に叩きつける。何も言おうとしていないが、そこには抑えきれないくらいの怒りがあると、そのリクの様子が物語っていた。
彼が1人でうづくまって泣いていた姿は、この時いた全員の目に焼きつく。