トリップ
そして、また前と同じように、誰かが手を差し伸べてくるのが見えた。
どうせまたあの警官に変わるに決まっている。しかし、またあの温かい手の温度を感じたい欲求が抑えられず、そしてここから抜け出したいという気持ちが膨らみ、手を握らずにそのままガバッとしがみついた。
そして「あれ?」と思う。
その体は土岐ではない、自分の胴にすっぽり収まってしまうくらい、小さかったからだ。
―・・・
何が起こったのだろうか。
病院の個室でリクの様子をずっと見ていたエリカは思う。さっきまでごめんなさいと寝言を言っていた彼が、いきなり起き上がってしがみ付いてくるのだから驚きを隠せない。
「あのっ・・・起きてますか?」
熱が込み上げて来そうになる。自分の真横にあるリクの顔、すらりとして、それでも服の下は傷だらけのはずの体がしがみついている。
「あ、またやってる」
秋乃が急に入ってくるのでビックリして慌てる。「これは、違うんです」と説明する前に、秋乃は軽くリクの頭を叩いた。
「ちょっと、何してんのよ。この子は土岐じゃないよ」
そう言われると、寝ぼけていると思われたリクがピクリと反応する。エリカから離れて硬く閉じた目をゆっくりと開く。
そして、リクは驚いたような顔でエリカを指差すと、それに合わせて秋乃もコクリとうなづく。
そのまま、リクは後ろに飛び退いた。