トリップ

「・・・そうか」

目を閉じて笑みを浮かべる姿は、安心感の滲み出たような表情だ。それで力を抜いたのかもしれない。
そして目を開けると、リクは何を思ったのか「少し聞いていいか?」と問いかけてきた。

「初めて俺を見たとき、どう思った?」
「どう思ったって、皆は」
「周りに合わせなくていい。素直な事を聞きたいんだ。秋乃にありのままの事ぶちまけたみたいに、な」
「ぶちまけたって・・・」

随分と暴力的な表現だ、と思う。初めてあった日のことを思い出し、相手はショックに思うだろうが口に出す。

「正直・・・変と言うか、怖いと思いました」
「どこが」
「人間じゃない目線で人を見るというか」
「ああ、ナマコと比べた時の事か」
「はい」

すると、リクは少しむくれたような、幼い表情を見せて言う。

「本当のことじゃないか。ナマコのほうが人よりいいなんて」
「先輩、何が気に入ってナマコに・・・」
「無駄がないんだ。人間のような無駄が」
「無駄?」
「そう。例えばだ。世界中どの国でも戦争をしていた時代があったろう」

第一次世界大戦や、第二次世界大戦の時代だ、と薬指を一本立てて説明するような口調になる。

「当時色々あったな。植民地とか奴隷とか」
「はぁ・・・」
「自分達の国が生きていくのに必要な資産だけ手に入れば、それで争いは酷くならなかっただろうに、無駄に追い求める欲望がもっと戦争を酷くする」

それはその時代に限らず、今はもっと酷い、とリクは苦々しい顔になる。

< 346 / 418 >

この作品をシェア

pagetop