トリップ
とある小学校、3年B組でひそかに外に漏れることなく行われていたいじめはツトム、つまり昔のキャプテンを苦しめていた。
首謀者は神奈川から引っ越してきた男子生徒、そこから柄の悪いクラスメイトへを広まっていったからだ。その矛先が向いた理由はツトム自身分かっていた。
「冴えない」とか「可愛くない」といった平凡でかつくだらぬだろう。
物を隠されるといったことでは滅多に心など動きはしなかったが、本当に悲しかったのは、書き上げた小説を1枚残らず破られた時だ。
「変なの~。ダサい」
「暗い奴が書く話は、どうせ暗いんだよ」
泣きそうにはならなかった。いや、彼らの前で惨めな姿を見せる気などさらさら無かったし、ショックが大きすぎて泣く気にもならなかった。
唯一、図書館の個室で本を見ているときにだけ、静かに涙がどっと溢れ出す。
誰にも守ってもらえない。
1人でも何にもなっていない。
傍にいてくれる者が、誰もいない。
淋しさと孤独感があふれ出し、ノートに物語を書く鉛筆の動きが止まりそうだった。携帯小説では飽きるほどある「守ってやる」の台詞が馬鹿馬鹿しく思えた。
――簡単に言うなよ。
その場にいたら、そう吐き捨ててやりたいくらいだった。
――守って欲しくたって、守られない奴が世界にどれだけいると思ってるんだよ。どうせ可愛いからだろ?
気付けば、ツトムは静かにそう口走っていた。