トリップ

独りぼっち。ずうっと。


・・・シュンリSide・・・

「ほら、あいつ」
「1人で住んでるの?」
「親に見離されたんじゃない?」

中学生時代、周りの人間は不自然な自分にそんな視線をよく向けていた。なので誰も近寄る事もなく、そのことを馬鹿にして喧嘩を吹っかけられ、返り討ちにしたこともしばしばあった。

「仲良くして欲しい」
「友達になりたい」
「誰もいいから、話したい」

自分の口から出てくるのは、いつもその言葉の逆だった。そう言いたいのに、言う直前になって酷い言葉に変わる。

日本に来てから「少しでも何か変わる」と思っていたが、母国と同じく、他人の自分と違ったの生き方(私なら、1人で住んでいる事など)を変に思う、日本人も中国人も、それ以前に人間だからそう思ってしまうのだと言う事を学んだ。

話す相手といえば雇い主くらい、女友達もおらず、たまに知らぬ男に話し掛けられるくらいだ。(そのことを『ナンパ』と呼ぶらしい。辞典で知った。)

寄り添って歩いている男女に道を聞いても、返されるのはこの言葉。

「意味分かんねぇ言葉で喋んなよ、ガキ」

あんたこそ意味の分からない日本語で怒鳴るんじゃないわよ。

言葉が通じないのをいいことに、そういうことがあるたび母国語で文句を呟いた。
そんなことの連鎖が続き、何度か食欲をなくしたり、銃の引き金を引けなくなったりもする。

だが、最近は少し変わったこともある。





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