気付いてよ
あの後、なんだかんだと言いくるめられて、私は大倉くんと帰ることになった。
途中まででいいと言う私のことなんてまるで無視して、結局マンションのエントランスまで送ってもらってしまった。
「ホントに途中でよかったのに。でも、ありがとう。」
「俺が一緒に居たいんだからいーの。」
にっこり笑って言われたら私だって悪い気はしなかった。
「なんか、最近開き直って…きた?」
「あはっ。分かる?まぁね、開き直らないとやってけないし。」
あ…。
「それ分かるかも。」
ホントに分かる。だって、私もずっとそうだから。
「うわー分かり合いたくないわ。」
なんだか可笑しくって、2人して笑ってしまった。
そして、そろそろ大倉くんに別れを告げてマンションに入ろうとしただけだった。
大倉くんの方にただ顔を向けて、近づいてきた足音にだって何の気なしに反応しただけだった。
だけだったのに。
「あ…。」