気付いてよ
チャイムが鳴る少し前に目が覚めた。
大きく伸びをして立ち上がる。
耳にはチャイムの音が鳴り響いてる。
授業の終了後直ぐの廊下にはさすがに人がいない。
しかも今は最終時限が終わったところで、残すものはHRのみだから尚更だ。
「ふぁ~…ぁ」
何とも気の抜けた声を廊下の静けさが吸収する。
慣れた足つきでE組、奏のクラスに向かえばざわざわと教室の中から声が聞こえて来た。
ドアを開けて視線を少し落とせばお目当ての奴が顔を上げた。
「かーなで。帰るぞ。」
そう言った俺の顔を見て、少し驚いた表情を見せたと思った時には、もう嫌そうなそれへと変わっていた。
そしていかにもダルそうな感じで言った。
「うちのクラスまだ終わってないから。」
これがいつものパターンだから俺も気にせずいつも通りの言葉を返した。
とほぼ同時にはいはい、という言葉と共にドアを閉められた。
だからその後の俺の文句ももちろんシカトされた。
まぁいっか。
もう少し愛想良くすればいいのになぁ。
あいつはキツ目の美人って感じだから、黙ってるとすごい声を掛けづらいんだ。
俺は全然平気だけど、いつだか友達が話していたのをふと思い出して少し納得した。
笑った顔とか可愛いんだけどなぁ。