気付いてよ

誰だ、んなこと言った奴は、失礼な。

俺はいつでも真剣だし。

そんな俺の考えを余所に山崎は話続けた。

「で、ちょうどいい時にお前がいたから、真実かどうか確かめようと思って捕まえてみたんだよ。でも、正直雑用は断られると思ってたから意外だった。ありがとな、助かった。どうだ、これから飯でも行くか?奢るぞ。」

おごりで夕飯は魅力的だったけど、この後は奏と会う約束があるからダメだ。

「これから奏と会う約束あるからダメなんだよ。あ、奏って俺の幼馴染ね。だからまた今度で頼むわ。」

そう言った俺に山崎は、いつも一緒にいるあいつか、と独り言のように呟いてから言った。

「お前はな、もう少し近いものに真剣に目を向けた方がいいかもな。」

はぁ?何言ってんだ、このおっさんは。

その言葉を聞きながら、最後の一部をホチキスで止めて俺は立ち上がった。

「よく分かんないけどさ、俺待ち合わせに遅れるから行っくねー!じゃ。」

さっきの言葉の意味を俺が痛いくらいに思い知らされることになるのは、そう遠くない未来だとも知らずに、俺は山崎に手を振って資料室を後にした。

外は秋らしい少し冷たくなった風が吹いていた。
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