気付いてよ
そんなことに考えを巡らせていたけど、掴まれた腕の痛みに思考がすり替えられる。
私は思わず朋の腕を叩いて言った。
「朋!?」
名前を呼んでも返事はない。
どう考えても、今の朋はいつもと違う。
「朋!痛いってば!」
もう一度言う。
すると、二度目でようやく朋が振り返った。
「わ、わりっ!」
朋は我に返ったかの様に慌てて私の手を放した。
そして、私は掴まれたところを触りながら、朋に訊いた。
「ねえ、一体なんなの?」
「いきなりごめんな。外出たら話す。」
そう答えた朋はもういつもの朋だった。