気付いてよ
「ほら、ね?嫌でしょ?朋が好きで頑張ってたんだけど…さ。…もう疲れちゃった…。」
朋は何も言わなかった。
言えなかったっていう表現の方が当て嵌まっているのかもしれない。
そろそろお開きかな。
さすがに泣きそうだ。
最後ってこんなにあっけないんだなぁ。
もう一度笑顔を貼り付ける。
そして、声が震えないように気を付けながら口を開いた。
せっかく今まで泣かないようにしてきたんだから。
最後に泣くのは違う気がしたから。
「朋が独占欲にもがくところ、見てみたかったなぁ。相手が私じゃないのが残念だけど。…さて、と。今言ったみたいに、これでも結構泣くの我慢してるんだよ。そろそろ限界だからもう行くね?」
「ちょ、かな…」
「今日は本当にありがとう。と…、幸村くんにも、早くいい子が見つかるといいね!じゃあね。」
後ろを向いた瞬間、その反動で表面張力が崩れて、一筋の涙が頬を伝う。
朋を初めて幸村くんと呼んだ。
吐き気がした。
いつか、そう言ったけど、もう幼馴染には戻れないことも分かってる。
自分の気持ちに嘘を吐き続けた私は、一番大事な人を自分から失ってしまった。
でも、愚かだとは思わない。
だって、一生届くことのなかったこの想いを伝えることだけは出来たのだから。
涙は止まらない。
今はまだ、想いも諦めきれそうにない。
ねぇ、朋。
いつかこんなこともあったと、あの時はお互い青かったって、もう一度笑いあえる日が来るのかな。