気付いてよ

俺はどうしようもなく奏に悲しい思いをさせてしまったということ。
これだけは間違わない、昔から今も治らない奏の癖。

泣きたいとき、泣くのを我慢するときにするしぐさ。

それは、髪の毛を震える手で触ること。

髪が短い時も長い時も、いつだって悲しくて、悔しくて、泣くのを我慢するときには決まってそのしぐさだった。

そのしぐさだってさっき久しぶりに見た気がする。

でも、本当は今までずっとそんな思いをさせていたかと思うと胸が締め付けられそうだ。

きっと、今も家で泣いているかもしれない。
電話でもしてみようか。

電話を掛けたところで、少しも解決しないのに俺の心の中は星が一つも見えない、今にも雨が降りそうな、でも降ってくれない。

そんな空のような気持ち悪い気分だった。

俺がこんな感傷に浸ることは間違っているはずなのに…。

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