気付いてよ
「なに、2人は付き合ってんの?」
まるで突拍子もない言葉が口を突く。
「え…?違うよ?」
「さっきも学校で抱き合ってたのに?」
違う。
こんなことが言いたいんじゃない。
でも、あからさまに見られてたって顔をした奏を見たら、頭に血が上って止まることなんて出来なかった。
「俺のこと好きとか言っといて、他の奴と抱き合ったり出来るんだ。しかも付き合ってない奴と。」
止めろ、止めろ。
頭ではそう思っていても、口は面白いくらいに饒舌だった。
俺にはこんなこと言える資格なんてゼロなのに。
奏の泣き腫らした瞳にまた薄い膜が張る。
あの時の奏の顔と重なる。
「ホント女子って切り替え早いのな。」
「おいっ!お前…」
今にも殴りかかってきそうな勢いで大倉が叫んだ。
だけど、それは奏によって止められる。
そして、奏が一歩俺に近づいて、今にも泣きそうな目で俺を睨みつけた。
「な、なんだよ。」