花には水を



それを追いかけるように、彼の足音が聞こえた。





また、重なる足音。





それにしても、なんと律儀な人なのだろう。




世の中には、親切心を持った人がちゃんといるんだなあ。




ごほんという咳払いが隣から聞こえた。




私はおもむろに彼の方を向く。






「さっきから思ってたんすけど・・・目ぇ見えないんすか・・?」




恐る恐るといった感じに彼が訊ねる。




うん、コンタクト落としちゃったからね。







「はい、コンタクト落としてしまったので・・・」





「え!それって、ぶつかったせいですか!あーすいません!あの!今すぐ探してきます!」





いや、そこまでしなくても。




家まであと少しだし・・・。







< 14 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop