花には水を
それを追いかけるように、彼の足音が聞こえた。
また、重なる足音。
それにしても、なんと律儀な人なのだろう。
世の中には、親切心を持った人がちゃんといるんだなあ。
ごほんという咳払いが隣から聞こえた。
私はおもむろに彼の方を向く。
「さっきから思ってたんすけど・・・目ぇ見えないんすか・・?」
恐る恐るといった感じに彼が訊ねる。
うん、コンタクト落としちゃったからね。
「はい、コンタクト落としてしまったので・・・」
「え!それって、ぶつかったせいですか!あーすいません!あの!今すぐ探してきます!」
いや、そこまでしなくても。
家まであと少しだし・・・。