花には水を
「別に気にしないでください。家に予備があるので。それに、あと少しですし・・・。このまま送って頂けますか?」
淡々と彼にそういうとズレたカバンを肩に掛け直した。
彼は、抜けたような声で曖昧な返事をとる。
一歩彼が、足を前に進める。
私も足をすすめる。
それから、別に何を話したとかもなく私の家に着いた。
「あ・・此処です。わざわざすいませんでした。」
「あ、いえ。こちらこそ」
「いえ、じゃあ、ありがとうございました。気をつけて」
「あ、はい。じゃあ」
人影がなくなっていく。
鍵の開いている玄関のドアをゆっくりと開くと、スパイスの香りが一気に私に漂ってきた。