花には水を
「は?ちょ!」
慌てたような俺の声は誰もいない廊下にただ虚しく響いただけだった。
…しかたがない、とっとと済ませてしまうか…。
ため息をつくと、おりかけていた足を戻して上へ上る階段に足を掛けた。
資料室のドアを開け沢山の資料が山積みになっている机の上に乱暴に資料を置くと、時計を見上げる。
時間、かなりかかったな…。
早くいかねぇーと。
急いで資料室から出ると、ここから近いもう一つの階段から本館にある三年の教室に向かった。
走る度に乱れる息と髪、額から伝った汗。
目前にした教室の前で息を整えるとドアを開ける。
音を立てて開いた扉から覗く教室。
俺は、小さく息を吐いた。
そこに灯の姿は無かった。
ふと見回した教室にひとつだけ机の上に取り残されたカバンがある。
もしかして…そう思って近づくとカバンには、俺が以前灯から貰ったキーホルダーと色違いのキーホルダーが付いている。
兄さんにあげるつもりだったけど、似合わなかったからあげる。
…と照れたように俺から顔を背けてくれた灯。