夜中散歩
「授業中メールするから、サイレント」
「うん、分かった」

教室へ入ると、案の定ユキが話しかけてきた。
一番後ろの席の私の前がユキだから、授業前はいつもこんな風に話している。
「拓と来てたでしょ」
「・・・なんで知ってるの」
「付き合ってるんだ?」
「・・・別にそんなんじゃないから。ほら、授業始まるよ」

先生が教室に入ってきても、それでもしつこく問いただしてくる。
「応援してるよ、あたしは」
応援されたって、まだ何も始まっていない。
ぼーっと時計の秒針を見ていると、机の中に隠してある携帯が光った。
周りを見渡すと、みんなノートに向かって黒板に書かれた文字を書いていた。

そっと携帯を開いて、メールを確認する。
『何してる?』
途端に、自分の笑い声が教室内に響く。
周りの視線が向けられて口を押さえ、俯き加減で返信を打つ。
『授業中です』
返信を送ってすぐに返事が送られてくる。
『そういえば、満月の画像どうした?』
『ちゃんと待受に設定したよ』
『いいことあるかも』
『でも満月は星が見たい』
『星?』

『流れ星を見てみたい』




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