夜中散歩
家を出て、少し離れた場所に拓は居た。
私は寝不足だっていうのに、拓は笑っている。
だけどその笑顔に、少し救われたのも本心だった。
「一緒に学校行くの?」
隣を歩く拓に聞く。
こんなところ他の生徒に見られたら・・・。

「え、いやだ?」
「ううん」
隣を歩くのもなんか変な感じする。
近くの中学校と言っても、拓が通う中学校と私が通う中学校は本当に近い距離にあった。
私の学校は男子より女子の人数の割合が圧倒的に多かった。
その代わりに拓の通う学校は女子より男子の人数が多かった。

緩くなったマフラーを結び直しながら言う。
「無愛想だよね」
「君には負けます」
その言葉に、歩いていた足が止まる。
「君?私の名前は澤井満月ですけど」
「知ってるけど」
知り合ったばかりとは思えないほど、気が合う人だと思った。



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