夜中散歩
「家どこ?」
「知らないよ、ここどこ?」
周りを見渡してみると、見慣れない景色ばかりだった。
「送るよ」
「・・・別にいいよ」
合わせていた目を逸らす。
「可愛くないな」
「うるさいよ」

そう言うと、拓は座って背を向けた。
「足痛そうだから、ほら」
「いいよ」
「いいから」
ほら、と言われて恐る恐るもたれかかる。
すると、軽々と持ち上げられた。
「うわっ・・・」
視界が変わってやっと、自分はおぶられている事に気づく。

「そういえば名前、聞いてなかった」
「名前?」
「俺は拓、渡月拓ね」
「澤井満月」
「どんな字?」
「満月って書いて、みつき」
「へぇー、じゃあ9月とか10月生まれ?」
「違うよ、12月」
「じゃあまだ14じゃねーじゃん」
「だって君がそのくらいに見えたから」
笑っていると、自分の帰路に近いことが分かった。



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