【企】$oldier File
乾ききっていない髪から雫を滴らせ、だいぶ大きめのTシャツに身を包んだ少女は、それを気にするふうでもなく、ベッドの上で銃を分解し、磨き始めた。
「でかいな」
「まあ、ね」
一度着てしまえば、もうどうでもいいのか、彼女は鎖骨が見える程にずり落ちたTシャツに不満はないらしい。
本人がいいのなら…と言いたいところだが、こればかりは俺の方がそうもいかないので、街に連れ出すことにした。
「車、出してくる。下で待ってろ」
彼女が困ったように笑ったので、俺は建物内の地図をわたした。
「髪は乾かしてこいよ。風邪引くぞ」
「バカにしすぎ」
パタリと閉じられた扉に彼女は悪態をつく。
彼女はベッドから飛び降りると、ばらばらに分解されていた拳銃を瞬時に組み立てた。
だぼだぼのTシャツの裾を片方にたくしあげて結び、長すぎるズボンの裾を折り曲げる。
腰にはピストルホルダーを提げ、組み立てたばかりのM2カービンを突っ込んだ。
彼女は部屋を後にした。




車の前で、俺はチラリと、結ばれてシワのよった自分のTシャツを見た。
お気に入りにシワがよるのはいい気分じゃないが、何も言わなかった。
代わりにドアを開け、早く乗るよう促す。

彼女はジープの車窓から吹き込む風に、髪をなびかせる。
C級の兵士が訓練に取り組んでいる様子を横目で見ながら、広い支部の敷地内をジープで抜けた。
「哀れなもんだな」
「なぜ」
「ああやって毎日訓練しても結局戦場じゃ最前線で盾になるだけだ」
彼女はくだらないというように笑う。
「最前線で野垂れ死にしたくなきゃ、意地でもA級まで這い上がってくる」
俺はその意地というやつでA級まで這い上がってきた彼女を見た。
彼女自身が、その経緯をはたして覚えているのかはわからない。
彼女はいかにも興味なさげに訓練兵を見つめる。
俺はその横顔から何の感情も読み取ることはできなかった。

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