【企】$oldier File
町はそれなりの賑わいを見せ、発展途上の西部にしては大きめの都市だった。
「どこがいい?」
「どこでも」
俺は仕方なく適当に店を選んで、彼女を店員に任せた。
近くの喫茶店で煙草を吸いながら、つくづく平和な街だと思う。
日頃自分達がやっている戦闘がまったく別の世界のように感じる。
否、自分にとってはこの平和の方が不自然なのだが。
まったく腐っている。
彼女が戻って来たところで、コーヒーとミートパイを2つ頼んだ。
「下着も買ったか?」
「当然」
運ばれてきたミートパイは、見た目はそこそこ旨そうだった。
一口食べれば味もそれなりで、悪くない。
「俺のことほったらかして、1ヶ月もどこほっつき歩いてた?」
「知らない」
「そうか」
彼女はミートパイを口に運び、味が濃いねと笑った。
「まったく……お前が行方不明の間、俺は支部長の雑用係なんだぞ?つくづくお前と組んで、俺は損しているな」
「嫌なら支部長に進言してペアを変えてもらえばいいよ。わたしは別にかまわない」
「冗談だよ。お前が一番マシだ。行方さえくらまさなきゃな」
「勝手に言って」
最後の一口を放り込み彼女はフォークを置いた。
「サルバ」
「ん?」
「遅い」
「すまん」
彼女がこれ以上機嫌を損ねないうちに帰った方がいいだろう。
俺は残りを口に押し込み、水で流した。
オニオンの香りが口の中で後を引く。
俺が会計を済ましている頃には、彼女はジープに乗り込んでいた。
しかしまあ、と俺は内心ため息をつく。
記憶を失っても人の趣向は簡単には変わらないものらしい。
彼女は、黒のミリタリージャケットにパンツと、支部に戻ってきた時とあまり変わらない服を選んでいた。
おそらく、紙袋の中の他の服も大して変わらないのだろう。
顔が綺麗なだけに勿体ない。
しかし人の趣向はそれぞれだから仕方ないのだろう。
俺は諦めジープを発進した。