多重人格
居場所
小さい時から舞台をみることが大好きだった。
家は貧乏でたまにテレビでやるのを見るだけだったけど…
どうしてもミュージカルがやりたくて、初めて自分の意見をおやじに伝えた。
「ダンスを習わせて下さい」と
5年近くしつこく頼んだ。そして小6の時にお許しが出た。
もちろん条件付きで。
「高校までは行かせてやるけど、学費を返す事」
「おやじがギャンブルをやるために、言う事を聞く事」
余り意味が解らなかったけど私にはどうでも良かった。それくらい、ダンスをしたかった。
元宝塚の方にレッスンを受けた。とても厳しい先生だったけど私にとっては唯一私でいれる場所だった。
宝塚を受験したい人が多かった為、発表会はミュージカルだった。楽しくてたまらなかった。先生が
「本当に芝居が好きなんだね」
って言ってくれた言葉にも幸せを感じた。
おやじからの条件も忘れて…
先生が主催するイベントやショーに出演させて貰えるようになり、より一層夢中になっていった。
中学生にはバイト代を払えないから、レッスン代に当ててくれた。
そして私は中絶させられた後に条件の意味を知った。
おやじの友達や知り合いに体を売られた…
パニックになり、暴れ狂う私におやじはドラッグをうった。
記憶が無いうちに全てが終わってる。
そんな日々が続いた。
私を最初に買ったのは、おかんがおやじの事を相談してる人だった。
私の分裂はどんどん増えていき、自分の意識のある時間はレッスンとステージの上だけになっていた。
でも、夜になると訳も解らず悲しくて、辛くて泣いていた。泣いてるのをばれると殴られるから、枕に顔を押し付けて泣いた。そのうち涙も出なくなってしまった。
人と話せなかった私を支えて守ってくれたのは、中3の時のクラスメートだった。
おかんが気付かない場所を殴るおやじと姉。
それに気付いて、私の代わりに怒って、泣いてくれたのがみんなだった。
その頃には、元々あった自殺願望が膨れ上がり、学校から飛び降り様としたり、リスカをしようとするようになった。
私には記憶が無かったけど、守ってくれたのは友達だった。そしていつも「ステージ楽しみにしてる。大好きだから頑張ってね!」
って言ってくれた。

私にとっての宝物
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