白雪姫の惚れ薬


木崎 璃子(キザキ リコ)。

大学院生。

“科学者もどき”のこの変な女は、正真正銘、俺の姉だ。


大学の研究室にこもっているかと思えば、ある日突然現れて、こうやって突拍子のないことを言い始める。

今日も……


「そういうわけで、これからリンゴと掛け合わせるから、買ってきて?」


にっこり笑って、俺の手に500円玉を握らせてきた。


「……はい?」

「そこのスーパー、まだやってるから。今日は青果の特売日だから大丈夫。」


言うなり、俺の背中を押して玄関に向かわせる。

なんで、俺が?

恨めしく睨んでみるものの、


「完成したらさぁ、さっそく試してみようね♪」


全く動じることもない。


「これで芯もやっと、長年の片想いから解放されるわねぇ。私ってば、なんて弟想いなのかしら。」


しみじみと頷いているし。


「大好きな“朱李(アカリ)ちゃん”を、ついにひとりじめかぁ。」


……は?

その言葉に、凍りつく。


「な…なんで知って…」

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