きいろい青空【完】



颯さんのことだから、どうせ軽いケガとかじゃないの?




「これで朝会を終わりにします。生徒のみなさんは、回れ右をして退場してください」



教頭の指示により、みんなは解散した。




みんな体育館を出て行く。




でも、俺は歩くことが出来ないままでいた。




辺りを見渡すと、花恋もそのひとりのようだ。





隣で美久が花恋を支えてやっと俺の横を通過した。



その顔は悲しいどころじゃない。


目はどこも捕らえてなくて。


放心状態だ。




「私、花恋を保健室に連れていくね」



「あぁ…」





俺もフラつきながら教室へ戻った。




女子に人気のあった颯さんだから、クラスの大半の女子は悲しんでいた。


さすがの男子も騒げる空気では無いんだろう。


静かに座ってぼそぼそと話している。





授業なんかまともに受けられるわけが無い。



どうして、俺はこんなに放心状態になっているのだろう?





颯さんがは“死んだ”と決まってないのに…。


いつもの笑顔ですぐに戻ってくるに違いないのに…





気がつけば、1時間目は終わり休み時間になっていた。





「直輝ーーーーー!!ねぇ、花恋知ってる?」



焦った顔の美久が走ってきて、俺の机を叩いた。





「いや、知らないけど…なんで?」





なんとなく想像はつくが、そうで無くてほしい。




「保健室に行ったら花恋がいないの!!」




やっぱり…予想的中。





「病院に行ったんじゃね?颯のとこの」




横から英斗が話しに入ってきた。





「そうだと思う。花恋のことだし…」



学校を抜け出し向かったんだろう。


いてもたってもいられない性格だもん。



「うん!」




英斗と美久の声が重なった。



そして、大きく見開いた目で俺を見てくる。






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