《完》螺旋 ―*RASEN*― 〜禁断の迷路〜
「……まだ、ダメだ」




だけどお兄ちゃんは
あたしを解放してくれない。




お兄ちゃんはあたしの
髪に顔をうずめて、小さな
声をこぼした。




「草の匂いがする」




「え? 草……?」




あたしはもうろうとする
意識の中で繰り返した。




お兄ちゃんはもう一度、




「あぁ。

草の匂いと、土の匂いだ。

――どうして?」




草と、土……?




自分の髪にそんな匂いが
ついてるなんて思いも
よらなかったけど、
心当たりはひとつだけだ。



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