空に手が届きそうだ

「後悔、してない?」
「する訳ないでしょ?」
そう言って、開き直ったように言い訳を続ける。
「そもそも、ネクラが原因じゃん。純ちゃんとイチャイチャしてるから……。」
ねっ、と隣に居る友人に同意を求める。
「そうだよね。そもそも、悪いのはあんただし。私達は、悪くない。」
その言葉に、怒りを覚えた。
「だからって、言っていい事と悪い事があんだろ。ましてや、皆の前で消えろなんて言っていい訳ねぇだろ……。」
「だって、そう思ったからそう言っただけ」
反省の、色すらない。
「もう、いい。」
諦めたように、優はもう一度ミシンに向かおうとする。
「ごめんね、加瀬君。せっかくあの時庇ってくれたのに」
無理矢理作った笑顔を貼り付けて言う。
「別に、いいけどさ……。」
ゆっくりと優に笑いかける姿に、黙って立ち上がった。
「帰るね、私達。」
もう話す事も無いしねと、顔を見合わせて他の子も立ち上がる。
純一郎は、何も言わなかった。
「またね純ちゃん。」優しくて残酷な声が振る。
「ネクラ」
優は、顔も見ずに何?と言った。
「あたしらがそれ使うからちゃんと縫っといてよね。」
捨て台詞のように言い放つと、ぞろぞろと部屋を出て行った。
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