空に手が届きそうだ
優しい人だ、と思った。自分の時間を削ってまで、一緒に居てくれる。ましてや、面倒な事まで一緒にしてくれる。
それが、嬉しかった。
「優……?」
「何?」
「出来た……?」
まだ半分寝ぼけているのか、あくび混じりの、声。
「もう少し。」
「わかった……。」
顔だけ起こして、携帯を見る。
「怜が、早く持って来いって」
「わかった。」
なるべく丁寧に、早く縫い進める。
純一郎は、気だるそうにむくっと起きて、頭をわしゃわしゃかいた。
「眠い?」
「若干。慣れない事したし。」
う~ん、と背伸びをして、怜から預かった紙袋に、出来上がった物を詰める。
「ありがとう。」
「うん。」
まだ、声は眠そうだ。
「出来たよ。」
最後の一つを縫い終わって、糸を切った。
「行くか。」
針を針山に刺して、しっかりと裁縫箱を閉める。
その間に、純一郎は優の仕上げたシュシュを紙袋に詰めた。
「行くぞ。」
「うん。」
ゆっくり、深呼吸をした。
よし。
鍵を持って、外に出ようする純一郎の後ろ姿を追う。
「開けとく?閉めとく?」
「一応、閉めとく。」
久々に出た外は、少し暑い。
開けた扉に鍵をかけると、純一郎と並んで歩く。
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