空に手が届きそうだ
「大丈夫か?」
少し、どぎまぎしながらも小さく頷く。
冷たい短い廊下を体を縮こめて抜けると、温かみのある五月蝿い廊下に出た。
「珍しいな。」
「うん。人いっぱい。」
活気に満ちたそこは、同じような服を着た人で溢れている。
純一郎の背中に隠れながら、息の詰まるそこを体を小さくして進む。
時々、純一郎は振り返り優が居るのを確認した。
「あっ、オレンジ君」
そう呼ぶのは、風花と良子しか居ない。
優、と呼ばれてぱっと、顔をあげれば教室の前にカメラをぶら下げた良子が居た。
「良子……。」
おもわず、純一郎を押し退けて良子に抱きついた。
良子は、何も言わずよしよしと優しく優の頭を撫でる。
頑張ったんだな、と思った。
「優。」
そっと、顔をあげるとゆっくり体を離す。
「まだ、終わってないでしょ?」
小さく、頷くと流れそうな涙を堪えた。
「行ってきます。」
開けっ放しのドアの所に居る、純一郎に駆け寄った。
目を見合わせると、純一郎は小さく頷いた。
教室の中は、せわしなく人の話し声が飛び交う
「怜!!!」
軽く袋を持ち上げると、ちょい待ち。と返ってくる。
「忙しそうだね。」
「あぁ。」
騒がしく、顔見知りの人が行き交う。

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