空に手が届きそうだ

優は、そう言って携帯を切ると、ふいに寂しくなる。
ため息を付いて、布団に携帯を落とした。

狭いはずの部屋が、やけに広く感じる。

孤独だと思った。

周りの書類に目を落とせば、刻々と近づくタイムリミットに、憂鬱になる。

(行きたくない。)

だけど、風花と約束してしまった手前行かなければならない。
時計を見て、大嫌いな制服に渋々着替える。
(今日は、数学と国語と体育と前日準備か……。帰ろっかな?)

頭の中で、今日の予定を並べて、最後のブレザーを着ると、中に入ってしまった髪をかきあげた。

(行くか……。)

仕方なく持ったカバンは軽い。

中身を適当にに入れて、戸締まりをする。
窓の鍵を閉めて、オレンジのカーテンをひいて、使わないコンセントを抜く。
それから、布団の上の携帯をポケットに突っ込んで、元栓が止まっているのを確認してから玄関で靴を履く。

ふと、誰かが来る気がして、携帯を見ると★印が付いていた。

今日はあの人が来るらしい。帰ったら、片付けようと思って家を出た。

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