空に手が届きそうだ
「ごめん。おまたせ」
ほんの少し、顔を赤らめた怜が軽く肩で息をしながら、ごめんごめんと言った。
「もしかして、まだ出来てねぇの?」
「そう。明日のダンスの衣装まだ出来てなくてさ……。」
紙袋を受け取りながら、恥ずかしそうに言った。
「でも、助かった。猫の手も借りたかったんだ。」
忙しそうな教室に、申し訳なさを感じる。
「何か出来てねぇの?」
「あっと……。」
ぐるり、と頭の中で出来ているのを探した。
「多分、女子のズボンとTシャツは出来てるからあとは男子のズボンとTシャツがまだかな?」
「ふぅ~ん。」
ほんの少しだけ、教室を覗くと机の上にはミシン。窓際では絵の具を使って何かしている。
誰もが、忙しそうに互いに顔を見合わせて仕事を探していた。
と、教室に居る誰かと目が合ってしまった。
(怖い……。)
すぐさま純一郎の後ろに下がる。
「どした?」
その姿に二人は、目を合わせた。
何も言わず、怜はゆっくり頷いた。
そっと、純一郎は怜に優が見えるように体を動かす。
「優?」
ギュッと、唇を噛み締めていたら優しく呼ばれた。
そっと、顔を上げれば優しい怜の笑顔。
「大丈夫?」
「大丈夫。」
泣いてる、気がした。
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