白銀の女神 紅の王



自分の世界にトリップしていたその時―――


「エレナ様!」


もやもやとした思考を切り裂く明瞭な声に引き戻される。

思いの他大きく後宮に響いたその声にビクッと体が跳ねる。

アールグレイの入ったカップを落としそうになりながら我に返れば、目の前には腰に手を当て少し怒ったような表情のニーナ。



「えっ!?あっ…何?ニーナ」


慌ててカップを置き、ニーナの方に向き直れば…



「何?じゃありませんわ。どうしたんですか?先程から何度も呼びかけているのに上の空で…」

心配そうな琥珀色の瞳がこちらを見つめる。

どうやらニーナの呼びかけに、カップを持ったまま固まっていて、応えなかったらしい。



「ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」


今日はニーナが市場から買って来た異国のお菓子に舌鼓を打ちながら、お茶を楽しんでいた。

最初は楽しかったものの“市場”という言葉からあの日の事が思い出されシルバの事に意識がトリップしていたのだ。



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