白銀の女神 紅の王
なんだ……?
また、“ジェス”…か?
以前夢うつつで呟いた事を思い出し、苛立つ。
しかし――――
「シル…バ………。」
一層苦しそうに眉を寄せながら、滑り込ませた手にすり寄るエレナ。
「ッ………!」
心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚える。
そして、先程の苛立ちが嘘のように、スッと消えた。
しかし、代わりに沸いたのはやりきれない想い。
自分の名を呼んで、一層眉を寄せたエレナ。
苦しめているのは俺か…?
否、エレナを苦しめる存在は俺しかいないか……
自嘲気味に笑いながら、涙の後を拭う。
「冷えているな……。」
頬を拭う手から伝わって来たのは、冷えた肌の感覚。
規則正しく吐き出される息は、熱かった。
チッ……
だからベッドで寝ろと言うんだ……
冷えた体に苛々としながら抱き上げ、ベッドへ移動する。