白銀の女神 紅の王
しかし、そんな願いも虚しく、フォレスト伯爵は悠然と言い放つ。
「貴方の“人の心を読む”力です。」
「ッ………。」
何故それを…と口にしようとした時だった。
キィー……―――
静かに開く扉。
次いで入って来た人物に、開きかけた口は言葉をなくした。
コツコツ…と、革靴が地面をならす音を聞きながら、ゆっくりとこちらへ来るその人を目で追う。
「久しぶりだね、エレナ。」
不自然なくらいにニッコリと笑う目の前の人物。
いつもとは違う、綺麗な服に身を包み、スカイブルーの瞳がこちらを見据える。
その顔は、忘れるはずのない人のもの……
「ジェ…ス……。」
ポツリと、その人の名を呟く。
小屋に現れたのは、私が王城を抜け出したきっかけとなった人。
私の大切な友人だった。
けれど、私が名前を読んだ時に返された笑みは、知らない人の様だった。
「何故ここに…?イースト地区にいるんじゃ……。」
ジェスは、私を助け出す計画がバレて、国王直属の騎士団に追われているはず。
それが、何故、ここにいるのか……
違和感だらけのこの状況に、思考がついて行けない。