白銀の女神 紅の王



溢れる涙を拭こうと、右手を上げようとした時だった。



ピタッ…――――

「ッ………!」

シルバの大きな手が、私の頬を包む。

涙を拭う為に上げられた右手は、途中で止まった。



暫しの沈黙の後―――

「泣くな……。」

眉を寄せ、苦しそうな表情をするシルバ。

その表情を目の当たりにし、涙をたたえた瞳を見開く。




「お前に泣かれると、俺はどうしていいのか分からない……。」

そっと涙を拭う手に、更に涙が溢れる。

大きくて、温かな手。

熱を分け与えてくれるかの様な優しい……



そうか………

宴の夜、私が意識を失っている時に感じたあの手。

あれは、シルバの手だったのね……

シルバが、私を救ってくれた。

深い闇に囚われそうになっていた私を……



「ふっ…っく………。」

気付いてしまったら、更に溢れてくる涙。

シルバは“泣くな”と言っているのに。

煩わしいと思われていたとしても、この涙は簡単に止まってくれない。



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