白銀の女神 紅の王



チラリと、視界の端に映ったロメオたちを見れば、弓を大きくしならせ、狙いを定めている―――


お願いっ……間に合って……!



「エレナッ……止めろッ!」

ジェスの声が再び聞こえたが……


「シルバッ!」

悲鳴にも似た声で叫ぶ私を、その場にいた者たちの視線を集める。

一瞬、動きが止まったけれど…

一番止まって欲しい人たちには、届かなかった。





紅の瞳を見開き、驚くシルバに、ふわり…と抱きついた瞬間―――






ドンッ……―――――


「ッ………!」




背中に感じる衝撃。




勢いよく放たれた矢は、私の背に突き刺さった。





シンッ…と静まり返る辺り。

今まで剣を交えていた部下、私を拘束していたジェス、そしてフォレスト伯爵までもが驚きに目を見開いていた。



そして――――



「エ…レナ………。」


私の名を呼ぶ掠れた声。

背中に回された手が震えていると感じたのは、きっと気のせい。

呼ばれるままに、顔を上げれば……






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