誘拐犯は私の彼氏!?



救助隊が飛び込む。


僕はただ、暖かい手が沈んだ位置を、静かに眺めるしかなかった。


叫びたいのに、声がでない。


逃げ出したいのに、足が動かない。


助けたいのに、……………勇気がない。



数分後、救助されてきた暖かい手の持ち主は、


………天貝先生だった。




「…………先…生…?」


もう一度、先生の手を握る。


あの暖かい手は、もう冷たくなっていて。


僕を導いてくれた手は、先生の手だったんだ。


< 87 / 164 >

この作品をシェア

pagetop