塾帰りの12分

「葉子さん!」

「はい」

「寛が今、通産省でそれなりの地位にいられるのは、学生時代にうんと努力して東大を優秀な成績で卒業したから、ということはあなたもご存知でしょ?
何度も言っているけれど、北見の家は、主人も主人の弟も寛も、みな東大出身です。
修太郎や啓太郎のように国立大附属校に入れなかった孝太郎のことは、母親であるあなたがもっと厳しく指導してしかるべきでしょ!」

「はあ……」

「はあ、じゃありませんよ。
あなたがそんなだから、いつまでたっても私がこうして目を光らせなくてはならないんじゃないの。
もっとしっかりしてちょうだい」


そう言われ、母は意を決したように顔を上げて反論し始めた。


「でも、孝太郎も高校に入ってからは好きなサッカーをやめて塾通いを続けていますし……」


そんな母を、祖母は信じられないという表情で見つめている。



なんか、やばい雰囲気――……


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