塾帰りの12分
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「あの、もしかして、秀代さんって、さっきの……」


北見先輩の昔話を聞き終えて、私がおそるおそる聞くと、先輩はうなずいた。


「ああ、うちのばあさん」


……ああ、やっぱり。

あのおばあさまに、そんな過去があったなんて。


「さっき聡美は、ばあさんのことを理不尽だって言ったけど、それを言うなら、あの人の人生そのものが理不尽だったんじゃないかって、俺は思ってる」


うん、たしかに。

家柄や学歴がよくないからって理由でいじめられ、その上、最後には、自分自身がお姑さんと同じ学歴至上主義になっちゃった、なんて。

理不尽な人生っていう以外ないかも。

ひどい、切ない、可哀相、そんな気持ちがぐるぐる渦巻いて、うまく言葉にならない。

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