偽りの結婚(番外編)
「ッ……喜んでもらえて嬉しいよ。」
一瞬、動揺を見せるも、ラルフは、そう言って抱きしめ返してくれた。
「送って行くから、準備しておいで。」
そう言って、距離を取るラルフ。
「はい!」
どこまでも優しいラルフに思わず微笑む。
そして、ベッドの上の花束を拾い上げ、準備にとりかかろうとした時。
忘れていた……と言うラルフの声が聞こえた後…
グイッ―――――
え?と思った時には、既にラルフの腕の中で…
見上げた視線の先には、顔に満面の笑みを浮かべたラルフ。
嫌な予感がする……と思った時には既に遅く。
ラルフの顔が段々と近付いて来たかと思えば―――
「ひゃっ………んッ!」
首筋にラルフの唇が辺り、思わず上擦った声が上がる。
チリッとした痛みの後、ラルフが顔を上げ…
「お守りだ。」
そう言って微笑む。
ラルフの唇があたっていた所には、くっきりと赤い痕があった。
「ッ~~~!」
今日もまたドレス選びが大変だわ。
ごめんなさい、モニカ……と、心の中で謝りながら誕生日の一日が始まった。