ジキルハイド症候群
「羨ましかった。その愛情をあたしに向けてほしかった………」
その結果がこれ。
ハハッと自嘲する彼女に俺は、思わず同情してしまった。
彼女もきっと苦しかったのだろうと思う。傷ついたりもしただろう。
だが、周りを巻き込んでしまったことは許されることではない。
自分の行き場のない感情を出すために人を、実の姉に当たるのは許されることではない。
恵里ちゃんは、心に深い傷を負ってしまっているのだから。
後悔しても、もう遅いのだ。
「――――ねぇ、あたしをどうするの?」
肩越しに俺を見た彼女は、思いの外泣いてはいなかった。
諦め、今の状態を受け入れている。
彼女の問いかけに俺は小さく唸る。
このことは蒼馬に、任されている。