ジキルハイド症候群
蒼馬の怒りを買って、生きている人間は少ない。
確実なのは、二度と蒼馬の目には写ることはないということ。
それをしているのが俺だ。
蒼馬は、消せと言った。
だけど、と俺は思う。
蒼馬の傍らにいる恵里ちゃん。この少女は恵里ちゃんの実の妹だ。
そして、恵里ちゃんの家は母子家庭。
果たして、恵里ちゃんはこれを望むだろうか……?
今まで、沢山の人間を蒼馬の前から消してきた。
その全ての人間が、泣きわめき命乞いをしてきた様を見ている。
しかし、どうだろう。
この少女は命乞いなどすることもなく受け入れているのだ。
「そうだね………」
ジッと少女を見下ろす。
俺の中で一つ、思いつく。
恐らく、これが蒼馬に知られたら間違いなくボコボコにされるだろう。