ジキルハイド症候群



「蒼真には言っておくからな」

「………」


勝手にすれば。


あたしは、返事をしないで屋上への階段を登り始める。二段上がって、ふと思った。


(そう言えば、あたしが恵里だってよく分かったわね………)


マリモの方を見てもマリモは既にそこから去っていた。


(蒼真といい、那祁といい、マリモといい………不思議)


不思議な人たち。
でも、それが嬉しい。
茉里と間違えられる事なくあたしをあたしと見てくれているって事だよね。


(~♪)


さっきの苛立ちが嘘みたいにあたしは気分よく屋上に足を踏み入れた。


「気持ち良い……」


頬を優しく風が撫でていく。
はじめての屋上は思った以上に良い場所だった。


静かに過ごすにはうってつけの場所だ。


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